A:ほとんどのケースで可能です。
歯医者は痛いところ。。。痛い経験をした。。。など治療中の痛みに悩んでいる方も多いとおもいます。
実際、アメリカ歯科医師会による調査によれば、患者さんが歯科医院を訪れることを躊躇させる原因の1つが ”痛み” だそうです。
根管治療中に痛みを訴える場合考えられることは、
1:局所麻酔をしていない
2:局所麻酔が効いていない
3:局所麻酔が効きにくい状態
です。
虫歯の治療、抜歯など歯科治療の多くが麻酔をして痛みのない状態で治療を行うことが一般的であり、もちろん、根の治療もその1つです。
すべての歯科医師が根の治療の全てのケースにおいて麻酔を行っているとは言い難い現状があります。ただし、ルールに沿った根の治療を行う上で、麻酔は全てのケースに必要であると考えられます。その理由は以下の通りです。
・ラバーダム防湿を行う際に歯肉が痛い。
無菌的な環境で根の治療を行うにはラバーダム防湿が必須ですが、ラバーダム防湿では
このような器具で治療する歯を挟み固定するため、歯肉に器具の丸の部分が当たると痛みをともないます。
・歯の神経が生きていればもちろんの事、神経がすでに死んでいるもしくは取り除かれた状態であっても、根の治療自体が痛みを伴う場合が多い。
根の治療が必要な神経の管の状態は、大きく4つの状態に分けられます。
①神経が正常に生活している状態
②細菌感染により神経が過敏になっている状態
③細菌感染により神経が死んでいる状態
④以前根の治療が行われたところに細菌感染している状態
このうち、①や②は歯を削るだけで激しい痛みをともなうため、このようなケースで麻酔をせずに治療が行われることはまず考えにくいですが、③や④でも痛みを感じる場合があるので、麻酔は必要と考えられます。
③や④では痛みを感じる神経が一部生きている場合や、神経が完全に死んでいるもしくは根の治療により神経が取り除かれていても根の外側には神経が存在するため、根の尖端部付近を触ると痛みを感じことがあります。
・麻酔を用いて痛みを与えずに根の治療することにより、治療中のみならず、治療後の痛みも軽減できる。
痛みの特徴として、一度痛みを感じると閾値が下がり、痛みのコントロールが難しくなります。よって、麻酔は痛みが出てからよりも痛みが出る前にしっかりと効かせることが重要です。また、治療中の痛みのコントロールは、術後の痛みも軽減できるという報告もあります。
以上の理由から、根の治療を行う全てのケースで麻酔を行う必要があると考えられます。
われわれ歯科医師は、治療中も治療後も患者さんにできるだけ痛みを与えることなく、快適に過ごしていただけるよう、細心の注意を払っています。患者さんのなかには、麻酔自体に恐怖心や不快感を示される方も多いかと思いますが、根の治療には最初からきちんと麻酔を用いて行うことで得られるメリットは非常に大きいと思います。
ただし、冒頭で「ほとんどのケースで可能」と申し上げたように、最初から麻酔を用いて治療を行っても、神経の炎症が強く麻酔が効きにくい状態・下顎の奥歯など麻酔が効きにくい部位が存在するのも確かです。万が一、痛みを感じるようなことがありましたら、遠慮なく歯科医師にお伝えてください。麻酔を追加してもらう、炎症が落ち着いてから治療を再開してもらうなど、患者さんに快適に治療を受けていただくための対処法があります。
参考文献
ADA survey.Influences on dental visits. ADA News 1998;11(2):4.