今回は兵庫県で勤務されています下田隆史先生をご紹介させていただきます。
2002年 北海道医療大学卒
2002年 大阪大学 顎関節・咬合科(旧第一補綴科)入局
2006年 大阪大学大学院歯学研究科 修了 博士(歯学)
2006年〜2008年 大阪大学口腔補綴科 医員として常勤
2008年 兵庫県神戸市 下田歯科医院勤務
2011年 日本外傷歯学会認定医
2014年 ペンエンドスタディクラブインジャパン卒業
2015年 ペンエンドスタディクラブインジャパン認定医
(聞き手)ECJ事務局
・早速ですが勤務地はどちらなのでしょうか?
兵庫県神戸市東灘区で開業しております
・神戸市!ペンエンドメンバーとしてはつい「かんべ」と読みがちですが(笑)いいところですね!今は何が神戸名物としてオススメですか?
(笑)やはり「神戸ビーフ」となりますでしょうか。但馬牛の中でも「神戸ビーフ」として市場に出回るには認定基準が厳しいそうです。
・「神戸ビーフ」!名前を目にするだけで食べたくなりますね!最近はあまり高級なお肉ですともたれがちですが、それでも食べたい!はっ!話が横道にそれました…(笑)診療時間はどのようになっていますでしょうか?
月~土曜日の9時~18時半(12時から14時まで昼休み、水曜のみ9時~12時)です。
・予約制ですか?予約は電話のみでしょうか?
はい、予約制です。現在のところ電話でのご予約のみとなっております。
・先生の医院では根の治療だけを受けることは可能ですか?
状況にもよりますが、根管治療のみ受診することも可能です。
・どのようにすれば、根の治療だけ受診することができますか?
まず電話にて治療希望の旨お申し出いただきます。受付担当の者が簡潔に尋ねますので、ある程度お答え頂き、その後来院のご予約という流れです。あるいは紹介元医院が紹介状を書いてくださる場合、現在治療中の歯の治療経過や現状を書いていただき、お電話にて紹介状がある旨を伝えてくだされば、スムーズにご予約が可能です。
実際に根の治療を当院にてスタートするかどうかは、初診時の問診やその他診査を経てから決定することになります。
・ペンエンドスタディクラブインジャパン(以下PESCJ)を知ることになったきっかけと受講する経緯はどのようなものだったのでしょうか?
卒業後10年ほど経ち、通常の診療においてはある程度自分の意図した通りの結果に治療を導けるようになってきた、と感じていた当時のことです。
ある患者の根管治療を開始したところ逆に痛みが惹起して全く消えない、という不可解な状況に陥りました。今だから言えますが、当時の私には診療の何が良く無いのか、理解できませんでした。私が過去勤務してきた時と同じように作業をしたのにもかかわらず、です。うまくいかない理由が分からない医療ほど、怖いものはありません。
そこで私はこの分野を専門的に教えてくれる教育を探しました。一般開業医に勤務しながら専門機関に教えを請うことはなかなか困難です。その中でペンエンドスタディクラブインジャパンが、専門性を持ち、理論に基づいて臨床を行う、という基本に忠実で高いレベルで教育してくれるように感じましたので、飛び込むことにしました。
・PESCJにいきなり飛び込まれたのですか?石井歯内療法研修会や藤本研修会などを受講されてから、というわけではなかったのですか?
今考えると、とんでもない話なんですが(笑)2012年に東京で開催されたPenn Global Symposium in Japanで初めて北米の治療をというのを目の当たりにし、そこから石井先生方の主催するPESCJを強く受講したいと思うようになりました。ところがPESCJに申し込むために過去の根管治療について学んできた経歴・履歴を書かねばならないのですが、私はもともとクラウン・ブリッジ・インプラントを学んできた補綴医。当時何一つ書けることがありません。
でも、患者様のことを考えると待った無しだとも思いました。
そこで「自己推薦状」を書くという暴挙にでました(笑)「今はまだ何も根管治療に関し、専門性を持たないけれど、英語論文を読むことは出来るし、何とか技術は努力でカバーする。学んだこと通り実践するので何とかしてくれ」と本当に書きました。推薦者もいない、PESCJに関する知識もない自分だからこそ、無茶出来たのだと思います。面接会場では予想以上のPESCJ受講希望者の数に唖然とし、帰ろうかなと思いましたが(笑)
・なぜ帰らなかったのでしょうか?(笑)
(笑)根管治療により真剣に向き合うきっかけとなった先の患者さまの症例に報いるべく、面接合格後は全力で受講しました。臨床に即して実際に小人数制で理論、術式、手技等を徹底的に鍛え上げられるのが特徴であり、それこそが望むところでした。過去にここまで実践的な卒後教育は経験したことないものでしたし、自ら進んで受講したかった教育でしたから充実した日々を送ることができました。帰らなくて良かった(笑)
・PESCJを受講してみて、一番良かった点はどんな点でしょうか?
受講後はもちろん私自身の歯内療法の臨床力がアップしたことを感じますが、それ以上に歯科医師が「人間の持つ治癒力を引き出すことで患者の治癒に貢献する」ことを学べたのではないか、と思っています。
PESCJの理念は日米の歯内療法臨床の格差を是正するための教育、とされていますが、そこに手品や神業のようなものはありません。過去からの多くの研究者や臨床医が積み上げてきた成功と失敗の膨大な歴史を、私たちがわずか1年余りでその中の一番重要なものだけを抽出して理論を学び、実践して自分に覚えこませるのです。
歯内療法において過去の人たちの経験を活かす。
それは細菌をどのようにコントロールするかということでした。
適切にコントロールできれば、あとは人間の持つ治癒力が回復させてくれる。痛みも腫れも骨の吸収もある程度自身の免疫が回復させてくれるのです。私は根管治療のみならず、医療の根本を学べたような気がしてとても良かったと思っています。
・これからPESCJを受講される先生方に何かアドバイスはありますか?
スタディクラブを受講することになった動機は各先生方によって三者三様だと思いますが、受講する機会を得られた先生方には積極的に受け身にならずに頑張っていただきたいですね。
石井宏先生や牛窪敏博先生はもちろん、スタディクラブをご卒業されてから根管治療を専門にしてご活躍されている先生方もおられますし、とにかく根管治療に専念できる(専念しなければならない)環境です。根管治療に関することには一切不自由しません(笑)ですから諸先輩方の知識と経験を利用して欲しいと思うのです。
・先生はPESCJのコースを修了され、その後も研鑽を続けPESCJ認定医となられましたが、今現在と以前では診療にどのような違いが生まれましたでしょうか?
今までも真剣に取り組んできたつもりでしたが以前とくらべると、診査診断〜治療終了までの予後の予測とその根拠、あるいはこの歯は治療不可能であるという根拠がずっと明確になりました。今ならこのスタディグループに入るきっかけを作ってくださった先の私の患者様の症例も、何が原因で何が治癒を妨げたのかを説明することができます。
また診療ではないのですが、今年に入りスタディグループの先輩方の講習会のアシスタントも経験させていただいております。その中で、一般ご参加の先生方のご質問に対し明確な回答が出来るようになるため、さらなる自分の診療の中での研鑽が必要であることを痛感しているところです。
・先生にとって「歯内療法」とは歯科治療全体の中で、どのような役割、ポジションだと考えていますか?
人が生活していく基本「衣食住」に照らせば、自身の歯を残す、違和感なく噛める、痛みなく噛めるというのは最重要だと思います。よく言われる「8020運動」歯が存在することは重要ですが、きちんと機能することが大前提です。
だとすると歯内療法は歯科治療の中でも、それらトラブルをかなり解決できるという意味で、もっとも大事と言っても良いのではないでしょうか。修復、補綴、審美といったものは歯内療法が正しく行われた上で、より機能的に噛むため、患者の要求を満たすための手段だと思います。幸い、と言いますか、以前に私は補綴科に勤務していたからこそ、余計に歯内療法の重要性が分かる気がします。
最近、歯科医学雑誌や講演会でも歯内療法の重要性がクローズアップされています。そういう自分もその流れに乗っているわけですが、今後は歯科医師サイドだけでなく、患者様への啓蒙も重要かと思います。今までは情報量そのものが少なかったのも事実なので。パッパッと治してください、とりあえず痛み取れてハイ終了というものでは本来ないですよ、と。その後、また苦労する時が来るかもしれませんよ、と。ぜひ、当コラムを読んでいただきたい。
・特に、根管治療を受ける患者さんにお願いしたいことなどありますか?
受診される方には、コンセプトに沿って治療する対価としての時間的、経済的な負担をしていただくわけですから、できる限りの説明をさせていただいております。ぜひ十分にご理解していただいた上で治療を受けていただけると嬉しいです。
・正しく知ってもらうことは非常に大切ですね。先生が印象に残っている症例があれば教えてください。
患者)50代女性
主訴)金属を歯に装着した後、しみるのと痛いのが続いている
半年前に前医を装着したが、その後からずっと冷たいものがしみて、最近は痛みも出始めたということでした。何度も金属の高さを調整してもらったそうですが、症状が消えることがないとのこと。またどの歯が本当にしみて痛いのかご自身で分かりにくいとのことでした。
原因としては下顎第一大臼歯にレントゲンで虫歯と思われるものが確認でき、結果だけ見れば症例そのものは易しく見えます。
しかし実際の口腔内では、虫歯は歯茎にごく近く舌に邪魔されて確認しづらく、原因の発見はやや難しいものであり、また第二大臼歯の知覚過敏も原因歯の特定をやや難しくさせるものでした。診査診断で的確に原因歯を判断するための材料を正確に集めることが重要であると再認識した症例でした。
(治療前)
(治療中)
(治療直後)
(経過観察時)
・やはり診査診断が非常に重要だということが再認識されますね!本日はお忙しいところありがとうございました。
ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
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