今回はPESCJ4期認定医の渡邉征男先生を紹介させていただきます。
略歴:1998年 日本大学松戸歯学部卒業
2011年 千葉県佐倉市にて開業
2013年 ペンエンドスタディクラブインジャパン修了
2014年 ペンエンドスタディクラブインジャパン認定医
聞き手:ECJ事務局
・お疲れ様です、早速ですが開業地(勤務地)はどちらでしょうか?
千葉県佐倉市ユーカリが丘で歯内療法専門で開業してます。そのほか、埼玉県ふじみ野市、神奈川県横浜市、東京都中野区の計3件の一般開業医にて歯内療法専門医として出張診療もしています。
・各地飛び回って忙しそうですね!開業医院での診療体系(診療時間)はどのようになっていますか?
おおむね9:30~18:00の時間帯で完全予約制です。不定休で完全プライベート診療なのでお電話(043-463-4449)またはお問い合わせフォーム(http://www.microendo.jp/contact/)にてお問い合わせください。
・ところで、なぜ歯内療法専門医という道を選択されたのですか?
日本は先進国と言われながら歯科界の状況は世界標準で考えると、欧米諸国に比べ見劣りしていると言われている面があります。
最近はかなり改善してきている面もありますが、歯内療法の領域に関してはかなり改善する必要があると感じたためPESCJの勉強会に参加した経緯があります。その結果、全国に素晴らしいコンセプトを普及させようと現在に至っています。
・ペンエンドスタディクラブインジャパン(以下PESCJ)を知ることになったきっかけと受講する経緯はどのようなものだったのでしょうか?
私が一般歯科医(GP)として診療している頃に友人で奥歯の根管治療で困った事がありました。その歯は通常よりもさらに重要な歯であり、自分が治療したのでは治せる自信がなかったため、治せる可能性が高い歯内療法専門医を紹介させてもらいました。その結果、友人は専門医の根管治療を受けて良好な結果が出ましたが、その際の治療結果より私とは雲泥の差を感じ、レベルの違いを知ったため難しい歯内療法症例の患者さんは歯内療法専門医に紹介するようになりました。
その頃から日本の歯内療法の実情に気づき、何とか改善していきたいと思い、自分自身も歯内療法に興味を持ってトレーニングしていくことになりました。
もともとは「患者利益を考え、一生涯自分の歯を保存させる」という考えの予防歯科に興味があり、定期管理をきちんと行う事で歯を残すことを特に意識して診療していました。しかし、どんなに定期管理による予防をしても失活歯(根管治療を受けた歯)が予後不良で抜歯になっていく事が多いため、日々の診療で「何とかならないものか」と思っていたところPESCJのスタディグループを知り、現在に至っています。
・PESCJを修了して認定医となった今、診療にどのような違いが生まれましたでしょうか?
PESCJ認定医となった今、以前よりもある程度自信をもって診療をする事が出来ています。(良好な結果を確実に出せるようになったので。)しかし、同時に診療に対する責任を今まで以上に感じることにもなっています。
歯科医師からの紹介による診療が多いため、良好な結果を出す事が非常に重要であり、かつ厳しい目で見られるので緊張感が常にあります。
私の場合、保険診療は全く行わなくなり、常に毎回が自由診療であるため診療人数は激減し不安定さは増しました。しかし、一人あたりの診療時間は長くなり、より丁寧な診療ができる環境が整ったことが大きな違いです。
実際に患者さんから感謝される事が多いので診療していて嬉しい事が多く、やりがいはあると思います。
・歯内療法(根管治療)を行うにあたって特に意識して取り組んでいる点はなんですか?
基本をしっかり行うこと。(診査診断を慎重に、無菌的処置、回数や時間、予約の配慮など)ご紹介頂く歯科医師もしくはスタッフとのコミュニケーションをとること。経過観察をできる限り漏れないように行うこと。この3点をより意識して取り組んでいます。
・紹介元の歯科医師、スタッフの方とのコミュニケーションは具体的にどのように行っていますでしょうか?
ご紹介頂く近隣の歯科医院(患者さんのかかりつけ歯科医院)には、患者さんが受診された際、治療終了時、経過観察時など必ず書面でのご報告をするようにしております。
また、1本の歯で根の治療と被せものの治療をする歯科医師が異なるため、誤解などが生じないよう、適切に連絡するよう配慮しております。
出張先の場合は医院によって様々ですが、出勤日数が少ないデメリットを補うために、主にEメールを活用し、問題などが起きないよう医院様と情報共有(ほうれんそう)をきちんと行うようにしております。医院によっては私に専属スタッフがついてくれるようになっており、十分な環境整備ができている医院もございます。
・印象に残っている症例を教えてください。
小学生の左上6番(左上の第一大臼歯)の症例です。神経に達する深いむし歯ができてしまい口蓋根の先端部にX線透過像を認めます。成功する可能性は何とも言えませんでしたが、慎重に診査診断を行った上で生活歯髄療法(Vital Pulp Therapy)を行いました。術後にかかりつけ医院にて修復してもらった後の経過観察時には透過像は消失し、歯髄の生活反応は正常であり予後良好でした。
まだ年齢が若い患者さんでしたから、神経を保存する事ができて患者利益につながると思われます。このままかかりつけ歯科医院にて管理してもらい何とか再治療にならない事を祈っています。
<治療直後>
<経過観察時>根の先の影が小さくなっていることが確認できる
<経過観察時>さらに根の先の影が小さくなっている
歯内療法専門医は根尖性歯周炎の予防と治療が主な業務です。すでに病気(根尖性歯周炎)になってしまった場合の治療は根管治療になります。
根尖性歯周炎になってしまう前の、かなり早い段階で介入できれば根管治療をしなくても済む場合があります。今回の症例のように神経を保存する治療も私達の専門領域の一つです。
・受診される患者さんにお願いしたいことはありますか?
歯内療法は専門性がとても高く、患者さんにとっては治療内容や付随事項(費用や時間、診療環境など)は非常に理解しづらいと思います。よって、色々と不安になり心配になってしまうのはもちろん理解できますが、一度診療をすると決めたら「お任せするというスタンス」で頂ければ幸いです。(ほとんどの方は大丈夫なのですが心配し過ぎの方がたまにいらっしゃいます。やむを得ないと思いますが・・・。)
時代は日々変化しています。診療技術や価値観、社会の制度、仕組みなど今までよりも確実に向上している面があります。
HPなどで事前にある程度の情報を得て頂いた方が患者さんにとっても安心につながるかもしれません。
・最後にこのページを読んでいる方に一言お願いいたします。
歯は臓器の一部であり、その価値は非常に高いものです。
よって、場合により歯を適切に保存させるためには、診療の質が求められる事がございます。質の高い診療を提供するためには優れた設備、時間、人、教育など多くの要件が必要になります。また、それを提供するまでに多くの人の努力や犠牲があります。
そのため、より良い事をするには場合により、それなりの時間や費用がかかる事も理解して頂きたいと思います。
日本はかなり閉鎖的な環境であるため情報が偏っていたり、多くあり過ぎて正しい情報に行き着くのに苦労する事があると思います。
視野を広く持って頂き、客観的に正しい情報を手に入れて頂く事で、より良い選択をして頂けたらと思います。
難しい歯内療法処置が必要になった状況において「かかりつけ歯科医院が歯内療法専門医に紹介し、歯内療法専門医が再度かかりつけ歯科医院に戻ってもらい続きの診療をする」という診療スタイルが日本全国に定着する事を願っています。
患者さんのため、歯科医療業界全体のため、最終的には日本のためになりますよう。
・本日はお忙しい所お付き合いくださりありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。