いろいろな状況が想定されますが、
治療が必要ない場合と必要な場合があります。
「痛みも腫れも、自覚症状が全くない。それなのに治療が本当に必要なの?」と疑問に思われたのですね。
一般的にレントゲンを見て「膿が溜まっていますよ」と説明されるのは、この様に根の先に黒い影が写ってきている状態でしょう。
「治療が必要ない場合」
私達が、治療が必要ないと判断するのはその歯が治癒過程にある時です。
レントゲンで根の先に黒く写る影が見えても、
・自覚症状がない
・触診や打診等の診査を行なっても正常な反応
・前に根管治療したが、最近である
この様な場合には、以前の根管治療の結果、治ってきている途中かもしれません。
根管治療後の治癒について、治療後約1年で8割が治癒傾向にあるかどうか判断でき、もっと正確に判断するには約4年経過をみるとよいという報告があります。
治癒過程にあるのかどうかを判断するにはレントゲンを定期的に撮影し、その病変が縮小傾向なのか、増大傾向なのかみる必要があります。
最初に見ていただいたレントゲン写真は、実は治療後12ヶ月経ち、術前よりも黒い影が小さくなってきているところなのです。
「治療が必要な場合」
レントゲンで写る根の先の黒い影の原因が根管内の細菌感染だと判断される場合には治療が必要です。
例えば、
・瘻孔が認められる。(根の先から歯肉への排膿の経路ができている)
・以前に根管治療をしたことがなく、診査をして、神経が失活していると判断できる。
・以前のレントゲンと比較して、黒い影が拡大する傾向である。
治療の開始時期に関しては、忙しく時間がとれないなどの事情がある場合、今すぐでなくても良いと思います。
ただ、開始時期が遅くなることで病変が大きくなる可能性、痛みや腫れなどの諸症状が出てくる可能性があります。
また、むし歯の治療や被せ物をやり直す場合に関しては、症状がなくても、被せ物のやり直しだけでなく、根管治療から行うことをお勧めします。
なぜなら、根管内に細菌感染を残した状態で上の歯のみを治療しても、土台となる根の治療を行なっていないと、被せ物をした後で細菌感染を原因として痛みや腫れが出る可能性が高いからです。
まとめると、
何も症状がなく、レントゲンで根の先に黒い影が写っている時は治療しなくて良い場合と、治療が必要な場合があります。
治療しなくて良いのは、以前の治療によって治癒している途中の時で、経過観察を行います。
そうではなく、根管内に細菌感染があると考えられる場合は治療が必要です。
いずれにせよ、問題の歯がどちらの状況かは様々な診査によって診断していく必要があります。
執筆者:石黒 仁江(PESCJ11期生)