治療と治療の期間が必要以上にあいてしまいますと、より治療が長引いてしまったり難治化してしまう場合がほとんどです。また、治療の期間が長くかかるということは従来の治療では解決できない理由があるのかもしれません。
治療の期間がかかってしまうと日常生活への負担が大きいことだと思います。しかしながら歯科医師の使命はあくまで皆様方の歯の健康を守ることです。この観点からお話しをさせていただきます。
歯の根の先の病気は、歯の中に侵入した細菌が原因です。
歯の根の先の病気を治療するためには、歯の根の中の細菌を可能な限り除去し、再び感染しないために確実な封鎖をすることが重要であることは過去のコラムでも述べたとおりです。
まとめますと
①治療中の根管への細菌感染を防ぐ
- 無菌的環境下での治療(ラバーダム防湿や滅菌した器具の使用など)
- 治療期間中の確実な仮封材(仮の蓋)と薬(水酸化カルシウム等)の貼薬
②治療後の根管への細菌感染を防ぐ
- 根の治療後、早期の土台と被せ物の治療
という過程が確実な封鎖のために重要となります。
しかし治療の期間が空くと、①②の過程を台無しにしてしまいます・・・
封鎖が弱まり、細菌が再び歯へ侵入して増殖するリスクにさらされます!
次回の治療の予約がご都合によって期間があいてしまうことを考えますと、治療期間中に一般的な仮のフタをした場合、2週間程度しか持ちません。あるいは比較的長期に適している仮のフタを用いたとしても、2ヶ月ほどでが細菌が侵入し始めるとの報告もあることから、治療の期間をあけてしまうとせっかく治療を行っている根の中に細菌が侵入して再び感染することになります。
細菌は空気の少ない湿った環境が大好きですから狭い根管内で増殖し、治療開始前と同じ、もしくは治療開始前よりも悪化した状態になってしまいます。まさにせっかくの治療が「台無し」になり得るわけです。
また根の中に入れるお薬(水酸化カルシウム)も1ヶ月以上、根の中に入れたままだと根の強度を低下させるという報告もあり、治療の期間があくことは歯にとってマイナス面が非常に多いと言えます。
とはいえ根管治療の多くはそれほど回数がかからないのも事実です。
過去のコラム(http://www.ecj.or.jp/根の治療根管治療には何回かかるの/ 参照)から、根管治療専門医は適切なコンセプトで根管治療を行い、多くの場合1~3回程度で治療を終了することが出来ることをご理解いただけると思います。
ゴールが見えずに長く通院するとなると予定が立ちにくいことになると思いますが、適切なコンセプトで根管治療を行えればだらだらと通院することもありません。
もし回数が多くかかってしまっていたり、治療期間が長いような場合、従来の根管治療では治らない難治性の根尖性歯周炎(根の先の病気)に移行してしまっているのかもしれません。
「治療が長引いているのかな?」「根管治療を複数回受けても症状が取れない」など難治化が疑われる場合、根管治療専門医、または同等レベルの歯科医師に相談することを考えてみても良いかもしれません。
例え難治化してしまった場合でもルールに則った正しい根管治療を、ステップごとに適切なコンセプトでしっかり行えば、必要以上に長期にわたる可能性は低いと思われます。
もちろん、難治化しないように早い段階で適切な治療を受けることが最も重要なことは言うまでもありません。
きちんとした治療を受けられる患者さまには予約を守っていただくことで、治療に協力していただけたらと思います。
執筆者:牛島正雄(PESCJ6期)