見えない治療は不安だと思います。今回はどのようなことを行っているのか、お話ししたいと思います。
前提として、根の病気は細菌感染によって引き起こされるものなのです。ですから、
根の治療は、「根に潜む細菌をとりのぞく」「細菌をとりのぞいた根管に、細菌がふたたび感染するのを防ぐ」
ための作業をしています。
日本で行われている根管治療は様々な方法があります。我々が行っている「ルールに則った根管治療」についてお話しさせていただきます。
根管治療によって、歯の根の中に感染した細菌をなるべく減らし、再び細菌が歯の中や根の先端に広がらないように予防・治療し、痛みも管理します。
レントゲン撮影や診査診断の後、どのような治療をしているのか見ていきましょう。
①無菌的な環境作り
歯の根管から細菌をとりのぞく前にやるべき「ルールに則った根管治療」の基礎となる部分です。根管治療は環境作りを正しく行うことから始まります。
これから歯の中から細菌をとりのぞくのですから、新たに外から細菌を侵入させないことがとても重要です。
・ラバーダム防湿
お口の中から息や唾液と混じって細菌が歯に入り込むのを防ぎます。また器具や薬液を間違って飲み込んだり、粘膜などを傷をつけてしまうようなアクシデントを防ぐ効果もあります。 (2015/7:参照)
・隔壁を作る
細菌の入ってくる原因(虫歯の部分)をまずは無くします。新しく人工の壁=隔壁を作ります。この作業がいい加減だと、その後の治療の意味がなくなってしまうため、丁寧に行うようにします。
②細菌除去
環境を整えたら、いよいよ歯の中の細菌をとりのぞいていきます。歯は小さく構造も複雑ですから、マイクロスコープ等の機器も使うことで、細菌をできる限りとりのぞくようにします。
・まずは機械的拡大
ファイルという回転切削する器具を用いて、根の中の感染した血管や神経から細菌をとりのぞきます。根を形作る象牙質、象牙細管といった小さな管に入り込んだ細菌をできるだけとりのぞきます。
・化学的洗浄も同時に
ところが機械的拡大だけでは十分に細菌をとりのぞくことはできません。そこで殺菌・除菌性のある薬液や振動する超音波装置を使って細菌をより減らします。歯の根の構造は複雑(コラム 2015/3:参照)ですから、いろんな力を借りて細菌除去を進めます。
・貼薬(根の中に薬を入れます)によりさらに菌を減らす
機械的拡大や化学的洗浄をしても、完全に細菌を根管から取り除けるとは限りません。そこで、根管内に人体に悪影響の少ない薬剤を根管内にいれることで細菌を極力減ることを期待します。 (このステップを省くこともあります。)
③細菌除去した状態の維持
・根管充填
細菌をとりのぞいた根管に再び細菌が侵入するのを防ぐことと、わずかに残った細菌は完全に埋めてしまって新たに増えないようにする作業を行います。
・仮封材、支台
根管充填をしても、まだ治療は終わりではありません。
歯に細菌が再び入り込むのを防ぐため、仮封材(コラム 2015/10:参照)、もしくは支台(コラム 2015/3: 参照)で塞いで根管治療を終えます。
いかがでしょうか。
これら数多くの作業を1〜3回でおこなっているので、1回あたりの時間も費用もかかりますが、ここまでやらなければ良好な結果を得られません。
既に歯内療法を行われていて再度の根管治療が必要な場合、まず以前の治療の歯科材料の除去をおこなうため、さらに回数が必要なこともあります。ルールに則った根管治療は治療を受ける方も大変かもしれませんが、根の病気を治すためご理解いただきたいと思います。
執筆者:寺岡 寛(PESCJ7期)