同じ根管治療でも、初めての治療(以下初回治療)と以前治療した歯の再治療(以下再治療)の成功率には違いがあります。
概ね、初回治療の成功率は、コンセプトに基づいて専門医のもとに行われた場合には90%程度 1)
再治療はその歯の状態にもよりますが40~70%程度と言われています。
それでは初回治療と再治療では何が違うのでしょうか。
再治療では以下に挙げるような治療を難しくする要因があります。
1)アクセスの妨げ
ポストや根充材などがある場合などはアクセスの妨げになることが考えられます。
除去困難な太くて長いポスト(症例提供:青山登先生)
金属の根管充填材(シルバーポイント)(症例提供:青山登先生)
2)根管形態の変化
根管形態から逸脱した根管治療が行われた状態(レッジ)や、根管に穴が空いた状態(穿孔)により根尖への器具の到達が困難になる場合があります。
髄床底の穿孔(パーフォレーション)(症例提供:青山登先生)
また再治療において、根管形態が破壊されているものは、もともとの根管形態が維持されているものと比較して、治療の成功率が大幅に下がってしまうということも報告されています。2)
3)根尖性歯周炎の難治化
根管内の深部まで細菌が侵入したり、除去の困難なバイオフィルム(細菌のかたまり)が形成されることで治癒が難しくなる場合があります。また根尖部に嚢胞が存在したり、根管の外まで細菌の感染がおこっている場合、治療自体が難しくなることが考えられます。3)
文献 3)より引用
また、治療の器具、材料が根の先より出てしまっていることもあり、治療が難しくなることもあります。
文献 3)より引用
4)除去困難な異物の存在
頻度は高くありませんが、根管内に器具が破折し、残存していることがあります。根管へのアプローチを困難にする場合があります。
根管内の破折器具(症例提供:佐竹里菜先生)
このように初回治療と比較して、再治療においては治療を困難にする様々な要因が考えられます。
場合によっては再治療を行うよりも、外科的歯内療法により根尖部を外科的に除去する方がよいケースもありますし、残存している歯質量、歯周病の進行、また歯にすでに破折がおこっているようなケースでは、抜歯を選択しなければいけないケースもあります。
よってまずは以前の治療の成否、術者の力量、患者さんの要望などを考慮して再治療を行うのが適切であるのかどうかを判断するのが重要です。
治療がうまくいかなかったら専門医、と思いがちですが、再治療はたとえ専門医が行っても様々な理由から成功率が下がりますので、初回治療から精密に治療されることをお勧めします。
執筆者:佐竹里菜(PESCJ9期)
1)Strindberg LZ
The dependence of the results of pulp therapy on certain factors :an analytic study based on radiographic and clinical follow -up examinations. Acta Odontol Scand. 1956 :14
2)Gorni FGM, Gagliani MM.
The outcome of endodontic retreatment: a 2-yr follow-up. J Endod 2004;30:1–4.
3)Siqueira JF.
Aetiology of root canal treatment failure: why well-treated teeth can fail. Int Endod J 2001;34:1–10.
4)Ruddle CJ.
Nonsurgical retreatment. J Endod 2004;30:827–45.