(外傷で)歯が折れた位置により、緊急度も処置内容も異なりますが、早めに歯科医院を受診していただく必要があります。
もし、あなたやあなたのお子さんが転んで前歯を折ってしまったら?
不安になるお気持ち、とてもよく分かります。
慌ててしまい、どうしていいか困ってしまうと思います
が、実際に誰にでも起こり得ることです。
このような場合、その後どう対処するかによって、その歯の運命は大きく変わってしまいます。
適切な対処によって、外傷を起こした歯を残せる可能性が高くなるのであれば、このような緊急の事態に備えて、外傷に対して正しい知識を持っておくことは非常に重要です。
国際外傷歯学会(IADT)ではこのような場合の対処方法を示したガイドラインがありますので、これに則ってご説明したいと思います。
このガイドラインは永久歯の外傷についての指標になります。歯科医師側の対応も合わせてご紹介することにより、患者さんにも大まかな流れを知っていただき、少しでもご安心いただければと思います。
まず、歯の頭の部分(歯冠)、歯の外側の一部が外傷により欠けた場合の対処方法です。
この場合、可能であればその破折片を探して歯科医院までお持ち下さい。
外傷により折れた位置が神経まで達していない場合、条件がよければボンドで破折片を固定するだけで済む場合もあります。
外傷により折れた位置が神経まで達している場合、歯の神経の治療や被せる処置(補綴処置)が必要になる可能性が高いです。
次は、歯が外傷により全部抜けてしまった場合の対処方法です。
この場合、緊急度は非常に高くなります。抜けた歯を乾燥させないように牛乳・生理食塩水・唾液など(水道水は避ける)に浸して、 できるだけ早く歯科医院にお持ち下さい。この状態で60分以内に歯科医院へお持ちいただけると、外傷により抜けた歯を戻せる可能性がグンと高くなります。
全体の流れをまとめますと、転んで歯が折れてしまった場合・・・・・・
①慌てずに患者さんを落ち着かせてください。(ご本人であれば、まず冷静に)
②落ちてしまった歯牙または破折片を探します。
③歯冠(歯の頭の部分)を持ち、歯の根っこやその周りに付いている組織には触らないようにしてください。
④歯牙が汚れていれば、軽く冷たい流水で洗い、歯が抜けた場所に戻すように試みます。(長時間の水道水での洗浄は避けてください。水道水は、生体と浸透圧や pHの差が大きいため、歯の周りの組織にダメージを与える可能性があります。)
⑤歯を元の位置に戻せた場合は、軽くハンカチなどでかませてください。
⑥もし、歯を元の位置に戻せなかった場合は、歯を牛乳・生理食塩水・唾液などが入った容器に入れてお持ちいただくか、なければお口の中に入れて(大臼歯と頬の間に挟み頬の上から指で支えて)お持ち下さい。特に、小さなお子さんは歯を誤って飲んでしまうおそれがあるので、容器に入れてお持ちいただくことをおすすめします。
⑦救急の歯科を探して受診してください。
その後は受診された歯科医院で、その歯の状態に合わせて応急的な処置が行われます。
外傷後は様々な後遺症が考えられますので、その後順調に歯が機能できるかを判断するには、しばらく経過をみる必要があります。
また、より正確な診査診断をご希望の場合、根の治療の専門医を受診されることをお勧めします。
なお、ガイドラインには書いてないのですが、スポーツ時の外傷などの時にどこの病院を受診するかをあらかじめ考えておくといざというときに役に立つかもしれません。