A:X線写真のみではなく様々な検査結果、治療に対する本人の希望、被せ物のやり替えが必要かどうか、治療をすることで現在の状態を改善できるのか、などを総合的に考えて治療をした方が良いのか、経過観察で良いのか判断する必要があります。
X線検査で根の先に膿が溜まっていると言われたということは、撮影されたX線写真で根の先に透過像が認められたということと拝察致します。
X線写真で根の先の透過像を認めるが症状(痛み、噛んだ時の違和感、膿が出ている等)が無い場合、治療が必要かどうかはX線写真のみでは判断することができません。
理由は
①X線写真は現在の透過像の状態しか分からないため、状態が良くなっている途中なのか悪くなっている途中なのか判断できない。
②透過像がある=感染しているという訳ではない。
③歯をぶつけたり、矯正治療で歯を動かした影響で一過性に出現する透過像の可能性がある。
④X線写真では透過像に見えても解剖学的な構造物の場合がある。
などが考えられます。写真だけではなく今までの既往の問診や神経の反応を見る検査など多角的に調べる必要があります。
症状が無いけれど根の先に透過像を認める歯を治療するべきか経過観察をするべきかは歯内療法の専門家の間でも意見が分かれます。
治療をしたほうが良い理由として
⑴今は無症状でもいつか痛くなる可能性がある。
⑵今のX線で観察されている透過像より大きくなる可能性がある。
治療をしない方がいい理由は
⑴症状がなく経過している。
⑵治療をすることで今は無症状なのに術後に痛みが出る可能性がある。
⑶治療によって歯を削らなければいけない。
など、ここに列挙したものは1例ですが、これらが必ず起こるとも起こらないとも言い切ることはできません。経過観察をしながら症状に変化があった時には治療をするというのも一つの選択肢です。
症状が無くても治療介入が妥当と判断されるのは、
❶過去に撮影したX線写真と比較して、根の先の透過像が大きくなっている。
❷被せ物の交換が必要で、過去の根の治療の質が高くないと判断される。
以上のような場合は治療介入が妥当と判断されます。
治療が必要な場合と必要でない場合に関しては過去記事もご参照下さい。
「根の先に膿が溜まってるので根管治療をしなくてはいけないと言われました。今、症状は無いのですが治療しなくてはいけませんか?」
執筆者:松原 大(PESCJ13期生)