歯の神経の治療後の疼痛は、軽度のものまで含めると約50%の患者が経験すると言われています。また、歯の痛みには大きく分けて3種類の痛みがあります。
まず、一般的な治療後の痛みについてお話しさせていただきます。
根管治療後におこった痛みを術後疼痛といいます。
根管治療の術後疼痛は
①一般的に起こりうる正常な反応としての術後疼痛
②根管治療で取り除くことができなかった起炎因子による疼痛
③非歯原性疼痛
に分けられます。(今回は③のお話はしません。③については Q. 歯が原因ではないのに、歯が痛くなることがあると聞きました。どのような場合か教えてください。を参照してください。)
では
①一般的に起こりうる正常な反応としての術後疼痛について
根管治療後の疼痛は、軽度のものまで含めると約50%の患者が経験すると言われています。
これらの疼痛の原因としては1)
①機械的要因 (治療中の器具操作など)
②化学的要因 (治療中に使う薬剤)
③微生物学的要因
の3つが考えられ、これらが単独または複合的に組み合わさって起こります。
痛みのピークは術後2~3日に迎えることが多く、そのほとんどは1週間以内に治ることが多いです。追加処置は切開排膿などの処置が必要なケースを除けばほとんどありません。痛みが強い場合は鎮痛薬の服用が有効です。1)
次に
②根管治療で取り除くことができなかった起炎因子による疼痛について
非外科的歯内療法の限界
1. 根管の解剖学的形態の複雑性
2. 機械的拡大、根管充填の限界
3. 細菌の抵抗性
などの理由により、起炎因子が根管治療行っても取り除けないことにより起こります。
一般的な術後疼痛が続く期間として、1週間を明らかに超えて疼痛が続く場合、歯内療法専門医の次の選択は、以下の場合を除き外科的歯内療法となります。
・当該歯の根管治療を歯内療法専門医以外が行なっており、再根管治療により根管治療の質が向上できると判断された場合
・全身疾患などにより外科的処置が行えない場合
・疼痛の原因と歯との因果関係が明らかでない場合
『通常の術後疼痛』と『病的な術後疼痛』の違い
通常、痛みのピークは術後2~3日に迎えることが多く、長くても7日間で治まる報告されており、1週間を明らかに超えて疼痛が続く場合、「病的な術後疼痛」と判断することが妥当です。
術後疼痛に影響を与える要因は、術前に疼痛がある場合、術後疼痛が有意に出現することを示す論文が多いです。
以上が一般的な術後疼痛についての原因のお話でした。
『痛み』は血液検査のような計測方法がなく、数値化できないため客観的評価が困難です。
根管治療で取り除ける『痛み』は歯髄痛(歯の神経の痛み)と歯根膜痛(歯の根のまわりの膜)であり、それ以外の痛みは根管治療では解決できません。よって感じている『痛み』が歯由来なのかそうでないのかを的確な鑑別診断をおこなうことが重要となります。
お困りの際はこの診断を高いレベルで行なっている歯内療法専門医や痛みの専門医などに相談してください。
執筆者:中谷 豪介(PESCJ9期)
参考文献(図書)